中国企業の動向を知るのに役立つ「投資家向けレポート」お勧め3選

中国企業分析

自分は中国企業の動向を調べるときに「海外メディア」「決算資料」「知財情報」など組み合わせて使っているのですが、

中国IT企業の業績&IR資料置き場所まとめ【テンセント・アリババなど(現在12社)】
テンセントやアリババなどの上場企業を中心に、中国IT企業の業績や決算資料の置き場所などまとめました

これらと合わせて活用しているのが「証券会社が投資家向けに提供しているレポート」です。誰でも閲覧可能なもの、口座開設した投資家のみ閲覧可能なもの、有料のものなどレポートの種類は様々ですが、無料のものでも読みごたえがあるレポートがたくさんあったりします。

今回は、中国情報に特化した投資家向けレポートの中からお勧めのものを3つ紹介しようと思います。

証券会社のレポートの特徴

まず、証券会社が提供しているレポートがどんなものか、簡単に説明します。

証券会社は「特定の企業を良く見せる必要がない」

証券会社が投資家向けにレポートを提供する目的は「投資行動を促す」(頻繁 or 大きな金額で、株を売ったり買ったりさせる)ことです。証券会社の収入は、投資家が株を売買する際に発生する手数料(取引1回あたり◎◎円 or 取引金額の◎%が多い)だからです。

各企業が作成する「決算資料」も同じく投資家に向けた情報提供ですが、決算資料は「投資家に自社の株を買ってもらう(保有し続けてもらう)」ことが目的なので、どうしても自社のことを良く見せようとするバイアスが掛かります。

それに比べると、証券会社は「株の売り買いを頻繁にさせる」ことが目的なので、特定の企業を良く見せる必要がありません。ある会社の今後の見通しが悪いのであれば、それを投資家に伝えて、「その会社の株を売却して、他の会社の株に買い替えることを促す」ことが証券会社のメリットになるからです。

そういう点では、「良い面だけでなく、悪い材料も見えやすい」のが証券会社のレポートならではの特徴と言えます。

個別銘柄や業界動向、国の政策解説まで、様々なレイヤーのレポートがある

各証券会社が作成するレポートには「個別企業の今後の業績予測」から「今後の社会動向とそれに関わる会社の紹介」まで様々なものがあります。

例えば後で紹介する東洋証券のレポートの中には、「中国で成長するコールドチェーン(低温輸送)市場」という切り口でEC(アリババ、JD)・冷却装置の提供企業(長虹美菱、海信家電集団)・医薬品企業(江蘇恒瑞医薬)など、低温輸送に関わる企業を整理して紹介したものがあります。

「それまで知らなかったトレンドを知り、それまで知らなかった企業の株を購入する(あるいは、そのトレンドで駆逐される他の企業の株を売却する)」ことを促す、投資家にとって価値が高いレポートと言えるでしょう。

中国動向の分析に役立つレポートを提供している証券会社3選

では、ここから各社が提供しているレポートの中から、お勧めのものに絞って具体的な内容を紹介していきます。

東洋証券:毎月発行の「特集記事」が秀逸

国内株と並んで中国株に力を入れている東洋証券。野村證券など大手に比べて全体の売上規模は大きくないですが、香港の現地法人に加えて、2008年には上海に事務所を設立・駐在員を派遣するなど、中国の情報収集を活発に行っています。

口座開設していなくても見られる中国株レポートは、日次レポート・月次レポート・特集記事の3種類。その中でもコラム的に読めてお勧めなのが「特集記事」。毎月異なるテーマを元に、業界動向や関連する企業について解説があります。

たとえば、2019年6月の特集記事は、中国版NASDAQ(ベンチャー企業の上場をメインにする市場)として注目の「科創板」に関する内容「科創板」が成立、新興企業の登竜門に~”中国版ナスダック”に高まる期待、証券市場活性化を後押し~)。

時価総額の大きな中国企業といえば、アリババ(NYSE:BABA)、テンセント(00700/香港)、中国工商銀行(01398/香港)などが思い浮かぶが、アリババはニューヨーク上場、テンセントは香港上場。中国工商銀行のみが香港と上海に重複上場している。

中国特有の厳しい規制が、本土株式市場の空洞化懸念を高めており、当局は資本市場改革の一環として、数年前から、実質許可制を改め当局関与を原則なくす先進国型の登録制を模索していたが、上海にスター・マーケットが誕生したことにより、行政の見えない壁がようやく打破されることとなった。

といった新市場が作られた背景から、

上場申請中の企業は125社を数えるが(うち、7社が承認済み。6月24日時点)、次世代IT・ハイエンド設備に分類される企業が全体の約7割を占めている。

米中貿易戦争で争点の一つとなっている半導体関連企業も目立つ。半導体関連部材を手掛ける安集微電子科技や、化合物半導体に欠かせないとされる「MOCVD(有機金属気相成長法)」装置を生産する中微半導体設備(AMEC)が上場申請している。AMECの装置は三安光電(600703)が採用するなど、大手企業の縁の下の力持ち的存在として活躍している。

具体的にどのような企業が上場申請を行っているかまで具体的な情報が書かれています。

2019年8月の特集となる「低温輸送(コールドチェーン)」特集(今こそクールチャイナ! 物流現場で進む改革~ネットスーパー隆盛が後押し、拡大するコールドチェーン市場~)では、

同業の中国蒙牛乳業(02319)は、京東商城(JD)グループの京東冷鏈物流と提携し、アイスクリームなど氷菓子の品質管理能力などを向上させている。広大な中国市場において、販路拡大のネックとなるのが物流だが、京東や蘇寧易購集団、アリババ(BABA)などの新興企業は、ネット通販の経験を生かしながら自前でコールドチェーンも整備中。食品製造企業や低温保存薬品を扱う医薬品企業が、ネット企業の物流網に「乗っかる」形での提携が今後さらに増えていくと思われる。また、順豊HD(002352)は、米物流大手のHAVIと提携し、コールドチェーン物流の合弁企業「新夏暉」を立ち上げるなど、物流業が”本職”の企業も存在感を強めている。

一方、冷蔵・冷凍設備を手がける企業としては、長虹美菱(200521)、海爾智家(600690)、海信家電集団(00921)などが挙げられる。四方科技集団(603339)や、空調設備メーカーの氷輪環境技術(000811)などの商機も広がりそうだ。

コールドチェーンの整備によって恩恵を受ける企業も多い。生鮮品に強みを持つスーパーチェーンの永輝超市(601933)はその好例となろう。前述のように、医薬品の低温輸送市場も拡大すると見られ、大手の江蘇恒瑞医薬(600276)などにメリットとして働きそうだ。

といった感じで、低温輸送の増加トレンドに対して、より生々しく今後追い風が吹くであろう企業群の紹介がされています。

東洋証券:中国株レポート

東洋証券 | 中国株 | 中国株レポート
東洋証券のサイトへようこそ。中国株の株価一覧,銘柄紹介,ランキング情報はもちろん,中国株取引についての様々疑問を解決できる情報も掲載しています。

楽天証券(トウシル):個別企業と業界の両面からレポート

続いては、SBI証券と並んでネット証券として人気の楽天証券。投資家向けに「トウシル」というメディアを運営しており、中国本土の証券会社(BOCI:中銀国際)が作成しているレポートを日本語に翻訳したものを提供しています。

誰でも見られる形で公開されているのは「中国銘柄(個別企業)レポート」と「中国セクター(業界)レポート」の2つ。これに加えて、「中国株の企業・セクターレポート」と「中国株ウィークリーレポート」の2つが楽天証券の口座を持っている人向けに用意されています。

個別銘柄の例として「美団点評(メイトゥアン・ディエンピン)」のレポート内容を見てみます。今後の業績予測とその理由など詳しく書かれています。

BOCIは美団点評のカバレッジを開始し、株価の先行きに対して強気見通しを示した。19年の赤字縮小と、20年以降の力強い利益成長を見込み、その理由として、フードデリバリー(ネット出前)取引の増加や競争環境の正常化、ローカル広告の市場シェアの拡大、新規事業の赤字縮小といった複数の成長要因の存在を挙げた。

(中略)

BOCIはネット出前事業が20年に黒字化し、21年には営業利益率が10%に達するとみている。ユーザー向け補助金負担の落ち着きや効率化、営業レバレッジの改善が見込まれるため。18年下期からの競争激化を受け、19年の黒字化は難しくなったが、20年下期にはユーザー獲得競争も一段落し、競争環境が正常化する可能性が高いという。

続いては、業界単位での分析例として「中国インターネットセクター」のレポートを見てみます。Eコマース、ネット広告、動画サービスなどについて幅広く解説が行われています。

BOCIは中国のネット通販銘柄の19年4-6月期決算が堅調と予想。中小都市部を中心とした競争激化で収益性がやや鈍ったものの、マス消費の底堅い伸びやオフラインから消費を奪い取り続けていること、広告収入の力強い伸びなどを楽観見通しの理由に挙げた。ただ、中国のデジタル広告市場の先行きに対しては引き続き慎重。マクロ経済の減速を背景とするオンライン広告需要の伸び悩みやショート動画アプリの普及に伴う広告在庫の増大が理由で、ソーシャルメディアやニュースポータル、動画プラットフォームを含む各種チャネルにおいて、ブランド/フィード広告の値下げ圧力が続くとの見方。

トウシル(中国銘柄レポート・中国セクターレポート)

中国銘柄レポート | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
中国の現地証券会社より提供されるアナリストレポートから、当社の取扱銘柄を中心とした「企業レポート」を日本語でお届けします。 中国株式初心者の方でも分かりやすくまとめており、会社・セクターの現在の状況、今後の展開がはっきりとわかります。今後も注目を浴びるであろう中国株の投資判断材料にご利用ください。
中国セクターレポート | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
中国の現地証券会社より提供されるアナリストレポートから、各業種ごとの動向をサマリーした「セクターレポート」を日本語でお届けします。 中国株式初心者の方でも分かりやすくまとめており、会社・セクターの現在の状況、今後の展開がはっきりとわかります。今後も注目を浴びるであろう中国株の投資判断材料にご利用ください。

※中国株取引の老舗・内藤証券にも「個別企業」「業界」のレポートがあるのですが、口座保有者のみ閲覧可能となっています。自分もいま口座開設手続き中なので、内容見て有益そうであれば本記事に追記したいと思います。

マーケットレポート|内藤証券
日本株、中国株、米国株。私たち内藤証券は、グローバルな視点のマーケット分析とローカルに根ざしたお客さま至上主義で、あなたのベストな資産形成をお約束します。

カブドットコム証券:三菱グループの安定のリサーチ力

最後に紹介するのは三菱UFJグループに所属するカブドットコム証券。

口座開設した人のみ閲覧できる場所に「三菱UFJリサーチ&コンサルティング」が提供するレポートが置いてあるのですが、実はレポート提供元のサイトに行けば、口座を開設していなくても読むことができます。

例えば、2019年5月に公開されたレポートは中国地域経済の市場としての特徴がテーマ。日本にいると上海・北京・深圳など一部の都市の話題しか聞こえてきませんが、中国経済を考える上では他のエリアのことも考える(そのために現状を知る)ことが不可欠です。

また、2019年8月のテーマは「日中のサービス収支の比較」。観光、金融、知財使用料、IT通信サービスなど、物の売買(電化製品、素材など)以外の分野で、中国と日本の収支がどう推移してきたかが詳細に解説されています。

前述の2社のレポートに比べて、さらに広い視野で中国経済を捉えたレポートが用意されており、参考になる点も多いかと思います。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング(中国経済レポート)

中国経済レポート | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)の公式サイトの「 中国経済レポート 」。当社のサービス、レポート、セミナー・イベント、採用情報などを掲載しています。

まとめ

今回は、中国企業や業界の動向を調べるツールとして

・証券会社が投資家に提供するレポートの有用性
・おすすめのレポート3選

を紹介しました。いずれも無料で見られる資料なので、興味ある方はぜひご自身で気になるレポートを探して読んでみていただければと思います。