テクノロジーの仕事に関わる人間は、本格的に中国語をやらないとヤバい気がしている

特許公報公開日の比較表中国語習得
同じ特許の種類別公開日時(中国、国際出願、アメリカ)

先日こんな記事を発見しました。

中国企業からの案件が増えてきているとか、中国人エンジニアが書いたブログなどに直接アクセスして情報を得られると良いよね、といった話が紹介されています。

本記事は、特許業界の話題を中心に紹介しながら、テクノロジーに関わるなら中国語できないとヤバくなるかもという話を書いてみようと思います。

※「中国国内の特許に関する話」と「中国企業の特許に関する話(中国国外での特許出願も含む)」が整理しきれてないですがご了承ください

知財業界における中国の動向

国別出願数はぶっちぎりで1位。2位アメリカの約2.5倍

アメリカや日本など各国で特許出願件数が横ばいになる中、中国だけが特許出願件数を継続的に伸ばしています。世界全体の特許出願件数のほぼ全てを中国が占めているというデータもあります。

全世界の特許出願件数の増加が約24万件(対前年比8.3%増)であるのに対し、中国の出願件数の増加は約23.6万件であり、全世界の増加分の約98%を占めることとなった。
引用:中国の特許出願件数が著しく増加~全世界の出願増加数の98%を占める~

特許権というビジネスリスクという点でも、特許公報という技術情報という点でも、中国国内で(=中国語で)日々生み出される特許は意識するに越したことはないと言えます。

国際特許出願が日本を抜いて世界2位に。アメリカ越えも射程内

中国が2017年に日本を超えて2位に、そして今の伸びをキープするなら横ばい気味のアメリカを抜いて2019~2020年にも1位になる可能性が高いです。

ちなみに企業別でみると、中国企業のファーウェイが2年連続で出願件数1位。さらに、5位にZTE(前年は2位)、7位にBOE Technology Groupがランクインしています。

2018年の世界特許出願、ファーウェイが2年連続1位--アジア勢が初の過半数に
世界知的所有権機関(WIPO)は、2018年に国際出願された特許の件数を発表。ファーウェイが過去最高の5405件で2年連続1位となった。

国際特許出願している特許は基本的に自国で基礎となる特許出願を行っていると考えると、国際特許出願する価値のある質の高い特許も相当数あると考えるべきかと思います。

中国の知財訴訟件数はアメリカを超えて世界一に

特許を出してるだけなら問題ないのですが、重要なのは「中国が(中国企業が)知財訴訟の体制を強化している」ということです。

ジェトロが報告している下記記事によると

量から質へ移行する知的財産権(中国) | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

・中国の知財訴訟件数はアメリカをはるかに超えて世界一(中国23万7000件、アメリカ6万件程度)
・特許訴訟は前年30%増の16,000件
・賠償額の上限額引上げ、懲罰制度が商標で導入。特許も導入検討中

と、特許取得のインセンティブが高まる制度作りを着々と進めています。

2018年1月にテンセントとGoogleが特許クロスライセンスを結んだと話題になりましたが、アメリカのトップ企業にとって中国企業の特許が脅威になってきた1つの現れといえるのではないでしょうか。

Google、中国Tencentと特許権クロスライセンスに調印 | TechCrunch Japan
Googleからまた中国関連のニュースが出た。Googleは中国のテクノロジーの巨人、Tencent(騰訊)と特許に関するクロスライセンス契約を結んだことを発表した。契約の詳細は明かされていないがTencentは時価総額5000億ドルの巨大企業であり、Googleではこの契約は「広汎なプロダクトとテクノロジーが含ま..

ちなみに、中国の特許事務所でシニアパートナーを務める弁理士は、こんなコメントをしています。

私の知り合いの日本企業の知財部長さんは,「今の中国は,中国企業同士で紅白戦をやっているようなもので,経験を積めば,そのうち外国企業に対して対外試合も行うだろう」と言っています。
実際,中国通信機器大手の華為技術(Huawei Technologies)が特許権侵害としてサムスン電子の中国子会社を訴えた裁判では,今年(2017 年)の 4 月にサムスン電子の中国子会社に対し,華為技術の特許を侵害したとして 8,000万元(13 億 2,000 万円)の支払いを命じる判決が出されており,中国企業が外国企業から高額の賠償金を勝ち取るという事例が生じています
引用:中国からみた日中の知財業界に対する所感(PDF)

中国企業が外国企業を訴える訴訟の増加に対応して、外国企業が中国で特許出願を強化し、訴訟に備えるという動きもみられます。

特許出願受理件数は154.2万件であり、2017年の138.2万件と比べて約11.6%増との結果となった。また、いままでは増加の部分は主に国内出願人によるものであると思われてきたが、2018年は外国出願人による出願も14.8万件にまで増加し、対前年比9.1%増となった。これには、外国企業同士の訴訟及び外国企業が被告となるケースが増えてきたことが背景に挙げられる。
引用:中国知財局:2018年の知的財産関連統計データを発表

ここまでのまとめ

ここまでの話を加味すると

・中国国内での特許出願は既に世界一で現在も増加傾向。ビジネスリスクとしても技術情報としても追えるようになった方が良い
・国際特許出願も世界一が見えており、質の高い特許も増えていると推定可能
・中国国内の特許訴訟が増加。外国企業が巻き込まれるケースも増えており、それに伴い外国企業も中国国内での特許出願を強化している

と言えます。

中国語ができないと中国の特許情報にキャッチアップできない

続いて、中国の特許情報を追う上で中国語が出来ないとまずい理由をいくつか紹介します。

中国語と外国語では情報のタイムラグが1年以上ある

特許公報公開日の比較表

同じ特許の種類別公開日時(中国、国際出願、アメリカ)

上の表は、テンセントが出願したある特許の国別公開日時の比較です。1番上が中国での特許出願、2~3番目は同じ内容を国際出願、アメリカ出願したもの、4番目はその特許を改良したもの(なので今回の話にはあまり関係ない)ですが、要するに

・2014/12/30:中国で出願
・2015/5/13:中国特許庁が特許公報(中国語)を公開
・2016/7/7:国際出願による特許公報(英語)が公開
・2016/11/3:アメリカ出願によるアメリカ国内向け特許公報(英語)が公開

という状況で、要するにテンセントが2014年末に出願した特許が、中国語なら2015年5月に確認できるのに対して、英語だと2016年7月まで確認できないということです(そして日本には出願されていないので、日本語のものはありません)。

変化の激しいIT業界で、情報のタイムラグが1年以上あるのは結構ヤバいと思います。特に近年、中国国内では特許出願から公開までの期間が短くなっており、情報のタイムラグがますます拡大していると考えられます。

中国特許においては、2012年以降、出願から6か月以内に公開になるものが急増し、2013年以降は、全出願の50%以上が「出願から6か月以内公開」という異常な状況が続いている。
引用:中国早期公開特許の最新動向(PDF)

中国企業の特許の半分は中国語しか公開されない

本記事冒頭で紹介したデータによると、中国国内の特許出願は2017年は約134万件で、そのうち約15万件が外国企業による出願なので中国企業の国内特許出願は約120万件。一方、中国企業による国際特許出願は約50万件です。

国内出願と国際出願では時期がずれるので単純に比較はできませんが、中国出願の半分以上は国際出願されていないと言えます。

国際出願を挟まずにダイレクトでアメリカ出願するケースもあるとは思いますが、中国特許の半分は中国語以外の言語に翻訳されないまま潜んでいる可能性があるということです。情報のタイムラグ以前に、そもそも中国語でしか知りえない特許情報が半分以上あるということです。

まとめ

以上、「特許業界で中国の存在感が増している」こと、そして「中国の特許情報を知る上で中国語の重要性が高い」こと、について情報をまとめてみました。

特許情報を読むうえで有用な「テック系中国語の学習」についても別途記事を書いていければと思います。

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